長門は俺の嫁


 今日も真選組副長は江戸の住民を守るため汗水垂らし見回りに勤めていた。と、そこへ。

「あれぇ〜、多串くんじゃ〜ん。何元気?嫁さんは?」

 人ごみでも目立つ天然パーマがへらへらと笑いながら、通りの向こうから土方へ近付いてきた。

「うるっせぇ、それ以上近づいたら公務執行妨害で逮捕すんぞ。……嫁?」
「沖田くん、お前の嫁だろ?」

 銀時が真面目な顔で言った瞬間、土方は盛大に噴き出した。その上耳まで赤くさせてむせている。

「あれ、嫁じゃねぇの?いっつもいっつも一緒にいるし、てっきり幼な妻の趣味があってそばに置いておきたいのかと…」
「なッ…ちっげぇよ!嫁でもなんでもねぇ、部下だから一緒にいんだろーがッ!」

 赤い顔をした土方が変な汗をたらたらと流しながら怒鳴る。
 すると、銀時はふっと笑った。

「ああ、つきあってんじゃねぇの?じゃあ、俺が迫っても問題ないわけだ」
「…は?」

 そう言うと銀時は間合いを詰めてきた。自然と土方も後ずさる。土方は銀時の考えていることが分からず緊張していた。

「な、なんだよッ!?」
「土方くん、これ見てみ」

 そう言うと銀時は懐から何かを取り出した。その瞬間。

「な、長門おおぉぉぉぉぉッ!」

 土方の雰囲気が先ほどまでとは一変し、銀時に対する警戒心は失われ、その手の中にあった長門のフィギュアを奪い取った。

「トッシー、だよな?お前その子好きなの?」
「大っ好きでござるよ!拙者は眼鏡属性はないけれど、こう素直クールなあたりがなんともたまらないと言うか、あれだよあれ。 胸が大きければいいというわけではないんだけど、かと言ってひんぬー萌えというわけでもなくてこう、ひんぬーを悩んでるあたりが最高に萌えるというか、 あ、長門がひんぬーで悩んでる描写はもちろん作中にはなくて脳内補完だけど……」
「うん、うん。とりあえずトッシーの愛はわかったから、一旦黙ってくれる?」

 銀時は放っておいたらいつまでもしゃべり続けそうなトッシーをとりあえず黙らせた。

「トッシーはそいつが本当に好きなんだなぁ」
「勿論!ハルヒたんやみくるたんやちゅるやさんも勿論萌えだけど、何と言っても長門が僕の嫁!」

 さっきまで一般人ですら斬り殺しそうな顔をして仕事していた鬼の副長は消え失せ、そこには真選組隊服を着たキモヲタの姿しかなかった。

「へ〜え。俺もさぁ、最近その子に興味があんだよ。だからトッシーが色々教えてくれねぇかなぁ?」
「坂田氏も長門にハァハァしているとな!?ああああそれはいいことナリ!僕でよければいくらでも長門の魅力を語ってしんぜようぞ!」

 トッシーがキラキラした瞳で銀時を見つめている。銀時はにやりと笑いトッシーの腰に手をまわした。

「だからさぁ〜、2人でゆっくり休めるところに行かねぇ?」
「…というと、漫喫かネットカフェで?」
「もっと2人っきりで他人に会話聞かれる心配もねぇとこ知ってんだ俺ぇ〜。だから、一緒に行こうぜ?」
「どこでもいいよ、坂田氏が行きたいとこならどこでも」

 トッシーからの返答を待って、銀時は歩き始めた。腰に回した手で撫でまわしてみたが、トッシーは長門フィギュアに夢中で気付かない。
 あんまりにも想像通りにことが運びすぎて、銀時は内心笑いが止まらなかった。沖田くんが言っていたまだ完全にトッシーが抜けきっていないというのは本当だった。



 大通りからだんだんと人通りのない細い暗い路地裏へと進んでいく。この先にどんな店があるのか、流石のトッシーでも気になりだした。

「あの、坂田氏?これは一体どこに向かって……ッ!?」

 その疑問文をすべて言い終わらぬうちに、銀時はトッシーを抱きよせ自分の唇を押しあてた。

「んッ…、な、なななななななななにをするでござるかッ!??!」

 トッシーはとっさに銀時を突き飛ばし距離を取ろうと試みる。しかし、へたれの腕力など銀時の前では何の障害でもなかった。

「いやね、ホテルでも行こうかと思ってたんだけど、俺金持ってねぇからさ。人来なそうなとこでいいかなっ?と思って」

 力なく銀時を押していた腕を逆に掴んで、トッシーを壁に押し付ける。

「なッ…坂田氏!僕は男で、その上BLの趣味はないから…!」
「嘘つけ。沖田くんといつもこういうことしてんだろぉ?」

 耳元で囁くと、耳たぶとぺろっと舐める。するとトッシーの口からひぁぁ、と小さな声が漏れた。

「何その反応?まさか実はいつも沖田くんに入れられてたりすんの?」

 銀時は楽しそうに笑いながら、片手で隊服のスカーフを外す。

「ぁっ、坂田氏……やめっ…!」
「顔、近ぇからやりやすいな…」

 そう言いながら銀時は再びトッシーに口付ける。いやいやと顔を動かしてなんとか逃げようとするので、片手で顎をがっちりつかむ。 その手で無理矢理口を開かせて舌をねじ込んだ。唇を離した時にはトッシーは目に涙をいっぱいに溜めて息を荒げていた。それが銀時の劣情に油を注ぐ。

「なにそのエロい顔。本当にいつも沖田くんにあんあん言わされてんじゃねぇの?」

 スカーフがなくなり露わになった首筋に吸いつきながら、トッシーの足の付け根に触れてみる。

「坂田氏!!ほ、ほんとうにやめ……」
「やめねェよ。トッシー俺がイきたいとこならどこでも行くっていったじゃん?一緒にイこうぜ」


「イかせやせんぜィ」


 歩いてきた方向からいきなり声がした。銀時はすぐに振り向く。
 そこには禍々しいオーラを放っている真選組一番隊隊長の姿があった。背後に阿修羅が見える。
 しかし、その服装がおかしかった。

「な、ななななななななながとぉぉぉぉぉぉぉぉぉvvv」

 トッシーが銀時の拘束を振りほどき、県立北高女子用制服(セーラー服)を着た総悟(with眼鏡)に走り寄る。
 抱きつこうとした瞬間に、阿修羅は右ストレートをトッシーの左頬に食らわせた。

「ぐげふっ!!」

 蛙のようなうめき声をあげてトッシーはその場に沈み込んだ。

「全く、俺がちょいと駄菓子屋に行ってるうちにいなくなってるからまたへたれ化したとは思ってましたが、まさかこんなところで旦那としっぽりやってるとはねィ」

 総悟は眼鏡を外してぐしゃと握り潰した。瞳孔は開いたままだ。

「沖田くん……その格好どした?」
「土方さんがへたれた時にゃあこの格好しとけばとりあえず捕まりますからねィ。こんな感じで」

 総悟は足もとで動けなくなっているオタクを指差しながら言った。

「だから常備してるってか。大変だねぇオタクの恋人持つと」
「で、旦那。旦那はこんなちゃちいもんで土方さん呼びだして、何してたんですかィ?」

 トッシーの懐からはみ出していた長門フィギュアを拾い上げながら訪ねる。

「え、いや何っていうか、この前色々世話したし、その礼にちょっとぐらいいいかな〜って…」
「いいですけどその代償は高いですぜィ?」

 総悟が長門フィギュアをぽいと捨て、刀に手をかけた。

「だ〜、わーったよわーったって。だから刃物沙汰はやめてください」

 銀時が両手をひらひらさせて戦闘意思がないことを示す。

「でもな、言っておくけど俺はそこまで悪くないからな。土方くんが沖田くんと付き合ってないって言うから俺は手を出したのであってだな…」
「……本当ですかィ?」
「マジだってマジ。これ嘘ついてる顔に見える?」

 銀時が自分の顔を指差しながら言う。
 すると総悟はまだのびていた土方の胸倉を掴んで揺さぶり起こした。

「土方さん!?早く起きやがれ永遠の眠りにつかせんぞコノヤロー!」
「ぅ、あっ……沖田先輩、ちょ…死ぬ……!」

 土方は前後に頭をがくんがくんと動かされ眼を覚ましたが、依然としてトッシー状態らしかった。

「土方さん、俺は土方さんにとって何なんですかィ?」
「えっ、いきなりなんですか先輩?禅問答?教室の後ろの席のクラスメート?」

 総悟はいまだに噛みつきそうな様子で土方の胸倉を掴んだままだった。
 その様子を見ていた銀時がつい口を出した。

「あれなんじゃねぇの?少なくともへたれた潜在意識のトッシーにとっちゃあ、沖田くんより長門の方が大事なんじゃねぇの?だから 通常時でも恋人とか言えねえんだよ」
「なっ…ちが、少なくともいつもの土方さんは恥ずかしがって言わねえだけで…」
「内心思ってないから言えねえだけなんじゃねぇ?」

 銀時がそういうと、総悟は目を見開いて動揺した。

「それは違う」

 その時、トッシーが胸倉をつかんでいた総悟の手を離させて語り出した。

「僕ににとって確かに長門は大事だ。でも、沖田先輩は長門やハルヒやみくるたんとはちがう。 沖田先輩は長門だけじゃなくてトモエ5000をやらせても何をやらせても似合う……ええとそういうことでもなくって、 その、僕は奥行きがある3次の女性は正直気持ち悪いけど、沖田先輩は3次元でも全然問題なく………好きだ、な」

 トッシーは頬染め総悟の手をとりながら、たどたどしく言った。
 総悟はそんなトッシーの様子を見て、やはり頬を染めていた。
 銀時は二人の様子を見ていて大きくため息をついた。

「はぁ〜あ。俺はもう帰るわ。沖田くん意地悪言ってごめんねぇ〜、逃した魚がでかかったもんだからつい、さ」

 そう言って銀時は歩き出した。

「旦那、今度団子一皿で手をうちますぜィ」

 銀時は了解したと手をひらひらさせながら、路地の向こうへ消えていった。

「さてと……、じゃあ土方さん。さっきの続きしやしょうか?」
「え、沖田先輩、続きって…?」
「旦那にやられてたことの続きでさァ。もちろん俺が入れられる方でいいんで。あ、もう沖田先輩とか言わなくていいですぜィ土方さんが素面だってわかってるんで」
「……おきたせんぱい、何言ってるんですか?」

 総悟は、にこぉと笑った。

「土方さん、俺に殴られて目が覚めてからはへたれじゃなくて普通の土方さんだったんでしょう?長い付き合いだんだからそれぐらいわかりまさァ。 いやぁ、ツンデレの土方さんの口から好きとか言ってもらえるなんてこれは旦那にお礼したいぐらいの気持ちですねィ」
「なっ……」

 土方の顔色がみるみる赤くなっていく。
 総悟は嬉しそうに土方にしがみついた。

「でも土方さん、いくらへたれ化してたからって旦那にホイホイついてって挙句熱烈にキスされてたんじゃあ、仕置きが必要ですよねィ」
「え、総悟くん、ちょ、待って…」

 総悟は上目遣いで土方を見つめた。

「土方さんは痛いのと気持ちいいの、どっちがいいですかねィ?」

 そして総悟は自分のセーラー服のリボンをしゅると解きだした。



トッシーきてます。銀トッシーもいいけど時代はトッシー桂かな!!
毎度毎度ジャンル外なリクをこなしてくれるナツメヤシさんは凄いと思う。←